2016GW旅行体験記「ニュージーランド・ネルソン旅行記」

4/29出発 関空発 中国南方航空の格安航空券を利用してニュージーランド(ネルソン)を旅行されたU.Yさんからのご投稿です。ニュージーランドにご興味のある方は、ぜひご覧下さい。

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今回の旅は4月29日から10日間のニュージーランド(NZ)南島に決まった。きっかけは3月後半、旅友達と飲んでいるときに「GWはヨーロッパに行くんだー」と聞き、私の旅スイッチがONになり、その時ぼんやりと浮かんだのがNZだ。なぜなら、去年6月の地中海クルージングで知り合った人が「いつでもおいでー」と連絡先を交換していたからだ。もしそれが社交辞令のあいさつだったなら、その次に思いついたプランに変更すればいいさと、「遊びに行こうかな」とメールを送ると早速返信がきた。「何日間何人とでも泊まっていいよ。もし他の場所に行く計画があれば、荷物はうちにおいて周遊するといい。いつくる?便名おしえてね。空港に迎えに行くよ」と大歓迎のメールが届いた。

ネルソンは”NZのへそ”と呼ばれる場所だ。地球の歩き方を見ても2ページほどしか紹介がない。関空から中国南方航空を利用し、トランジットのため広州へ向かう便で、たまたま隣の席になった、26歳の青年3人組のうちの1人が「ネルソンでなにするんですか?」と質問してくる。私の目的は、①ブリュアリー巡り②カヤック③野生動物との遭遇④トレッキング⑤温泉…と応える。「いいねー知り合いの家に滞在できるんだね。僕らはキャンピングカーレンタルして6日間周るんだけど、一番の目的はテカポ湖の星空なんだ。」とドローンも持ってきたらしい。それも魅力的な旅だ。

さて、いよいよ黒の塗装に白くくり抜かれたシダの葉が印象的なマオリ族伝統の模様(オールブラックスデザイン)のニュージーランド航空のプロペラ機でオークランドからネルソンまで1時間10分ほど、初めて降り立った小さな国内線のみのネルソン空港は「芸術家が多く住む街」らしく、翼の生えた女性の足元を、魚がのぼっている様子の真っ白いモニュメントが迎えてくれる。

午前10:30というのに、それにしても暑い。(紫外線は日本の7倍!)スーツケースを受け取る。さてと、ベリちゃん(地中海クルージングで知り合った人)はどこだろう。様子見に出口に向かおうをしたとき、アナウンスが私の名前を呼んだ。インフォメーションの方へ振り返ると「Oh look at you!」と腕を広げてベリちゃんが小走りで現れた。

1年ぶりの再会だ。ベリちゃんは少しぽっちゃりしたようでいて、あいかわらず明るい笑顔のとてもチャーミングなマダム。(なんと80歳でした)「この1年の間にパーキングがリニューアルされたから駐車に手こずっていたのよー」と訛りの強い英語でまくしたてる。

夏の終わりがすぐそこという時期のネルソンは、彩り豊かな木々が続く道に、これまた個性豊かな平屋が悠々と並んでいて、そのほとんどの庭に、キャンピングカーとボートがあることに驚いた。草木花と土と海の香りが混じる、カラリとした風がしかし、肌寒いと思っていたら生ぬるくて、これにも驚いたがラッキーだ。(ラニーニョの影響だとのこと)


ニュージーランド航空

ベリちゃんの家

ベリちゃんの家は空港から車で約10分、青い屋根の白い平屋とガレージの真ん中に日当たりのいいヤードが広がり、彼女の育てている花たちと大きなオレンジの木が、いきいきとしている。家の目の前の道に出て、右を向けば空に溶ける水平線、左を向けば連なる山々。(ベリちゃんが「あの程度はHILLと呼んでいるの。MOUNTAINとはマウントクッククラスを呼ぶのよ」とおしえてくれた)それにしても静かだ。音を探している自分に気づく。カモメの羽ばたく音、葉のこすれる音、美しい声の主はなんという鳥だろう。どんな旅になるだろう。

ベリちゃんちでの10日間は、まさにホームステイの生活だった。80歳で一人暮らしのベリちゃんは(旦那さんは16年前に亡くなって、一人息子はマレーシア移住中)海外からの来客受け入れに慣れていて「覚えてない?同じ客船で出会ったスイス人も家族であそびにきたのよ」と写真を見せてくれた。用意しておいてくれた清潔で快適なゲストルームには、ツアーインフォメーションセンターで集めてきたのだろう、いろんなパンフレットも置いてあり、ホテル滞在では味わえない暖かい時間を期待できた。

朝食はベリちゃんより早起きして私が担当した。数種類のフルーツを切り分け、オートミール・シリアル・ヨーグルト・ミルク・コーヒーを用意して、夜はベリちゃんが家庭料理をふるまってくれるため、そのお手伝いをし、NZビールやNelsonワインで乾杯する。だいたい18:00ごろディナースタートで、しばしば19:30頃になると、ベリちゃんはたのしみにしているTVを観に、いそいそ姿を消す。私たちは、リビングから聞こえるベリちゃんの爆笑と、TVに話しかける声を聞きながら後片付けをして、そしてベリちゃんに「デザート食べる?」と声をかければ「Yeah! Hokey Pokey!クリームとメイプルシロップもたーっぷりかけてね。んーっと2スクープ!」と8歳かなと思うほど元気だ。私たちは、聞いただけでぞっとするほど甘そうなデザートに若干ひきながら、これでもかとシロップをかけて作り、渡せば「yummy yummy」とやはり8歳の女児みたいに小躍りしながら平らげる。


パワフルなベリちゃん

甘そうなデザート

私も一緒にTVをたのしむときもあれば、1人むっつりカメラと共に散歩へ出かけ、星空を撮ったりして過ごす。(湖に行かなくても満天の星)そんな1時間のフリータイムを各々過ごした後は、いそいそダイニングに再集合して「rummi kub」スタートである。(興味があれば調べてみよう。インターナショナルなゲームで決め台詞はthe game that's never the sameだ)滞在2日目の食後にベリちゃんが「これしよう」と持ってきて、私たちも初めて知ったが、参戦しながら教わった。ルールをつかめたら最後、すぐのめりこんだ。(それから帰国まで毎晩。白熱すれば2時間くらいあっという間だが、かなり集中力が必要なので、正直くたびれたときもあった)おかげで0時前に眠り7時前に起きる毎日である。


rummi kub

満天の星空

とにかくベリちゃんはパワフルだ。80歳とは思えない。平気で2時間運転するし、100キロ以上アクセル踏むし、くねくねの山道もへっちゃらである。私たちの世話をしながら、よく食べるしゃべる笑う。そんな彼女のおかげで、すっかりどっぷりネルソン住人になっていた。

NZ旅が決まり、地球の歩き方を読んだ瞬間から、これは1ヵ月バックパッカーしなきゃ足りないな、と薄々感じてはいたけれど、実際はそれ以上だなと、知れば知るほど魅力が詰まった南島。こんなこと言ってはなんだが、旅先にネルソンをあえて選ぶ人はいるのだろうか。その人がここを選ぶ積極的な理由とはなんだろう。私はベリちゃんに出会わなければ、一生ネルソンに来ることはなかっただろう。ところが来たら来たで、結局ネルソンから車で2時間の範囲だけでも、あきることなくどころか、まだ足りないくらいだった。


カヤックをしながら野生のアザラシに遭遇


ゴールデンベイ・タカカ・エズマンナショナルパーク・ラビットアイランド・ケービング・・野生のペンギンには出会えなかったけれど、カヤックをしながら野生のアザラシには遭遇したし、温泉には入れなかったけれど、真っ青な透明度のププ・スプリングに行けたし、テカポ湖には行かなかったけれど、サーモンの池釣りにチャレンジして、釣れた立派なサーモンをその場で燻製料理にしてもらい油じゅんわり最高の味を味わえたし、味わったと言えば、この旅の一番の目的(ベリちゃんを別格として)NZホップのブリュアリー巡りにも大満足だ。


ププ・スプリング

ニュージーランドのへそ

サーモン釣りにチャレンジ

サーモンをその場で燻製料理

ベリちゃんの家から、歩いて行ける範囲にも数ヵ所あり(Mcashin's brewery,Founders Brewery,Light house Brewery…)工場見学に飲み比べ、1人でフラリと出かけては、アロマなホップに朝からいい気分な、これぞ至福の時。nelson craft beer trailには20ヵ所載っているが、ネルソンの製造所は14ヶ所。理想とする大きなタンクが並んでいて、製造している様子を見ながら、BARで飲み比べができるスタイルというのは多くないようだ。例えば、タンクは置いてないけれど、そのブリュアリー直営のBARや、あるいはボトル販売だけの場合も少なくない。私はその理想的な、製造工程を見ながら飲める ブリュアリーを5ヵ所巡った(そのうち2ヵ所は2度訪れた)。



これまでのビール人生で、ナンバーワンはどのビールだと聞かれたら、迷わず HARVEST PILSNER と(今のところ)答えるだろう、第六感まで届くホッピーなビールに出会えた。(Sprig&Fern brewery)一瞬で目の前がホップになり、フレッシュで華やかな香りが鼻腔ではじけ続け、いつまでも余韻が新鮮なまま。むろん脳に染みついたpozzyでpopなhopは、これを書いている今もキラキラが止まらない。感動的だ。



初めて訪れたNZ北島から、約20年経て訪れたNZ南島。一番強く感じたことは変化したのは私のほうだけだ、ということ。圧倒的な存在感でごっつい根を張る木々。大げさでなく5階建て10階建ての高さはゆうにある巨木が、そこらじゅうに生きている。樹齢何百年の幹にもたれかかると”心配するな”と守られている、穏やかなキモチになる。その間を、ちょこまか動く人間を見ていると、時折シルバニアファミリーの世界と交錯する。この木は私が生まれる前からここにいて、私が死んだ後もここにいる、見つめれば見つめるほど増える星空も同じである。

それでいて、へんてこな錯覚を起こした小さな存在の私はけれど、この20年間私なりに、精神的肉体的に進化あるいは退化している。良くも悪くも。もっとも、この感覚がインストールされてから、イライラやウジウジという不快な感情が沸々沸いてくると、シルバニアサイズの自分がニヤリと脳裏に現れて「やーいやい♪ちっぽけなことさ」とアラームを鳴らしてくれる。

旅の思い出はキリがないけれど、フと思い出すのは、決まってベリちゃんと過ごしたキッチンだ。5月8日はちょうど母の日だったので、友人とrichmond mallへ出かけ、ベリちゃんへ洋服と花とカードをサプライズで準備した。こっそりセッティングしたダイニングに、何も知らないベリちゃんがやって来る。「OH DEAR! How sweeeeet! 」と大成功。(さっそくプレゼントした服に着替えたが、嬉しさ余ってか、前後逆に着ちゃうおちゃめなベリちゃんでした)

帰国後、ベリちゃんから「あなたたちと過ごした、たのしい日々を愛おしく思い出します」とのメールが届いた。そして「ラッキーでしたね。あなたたちが去った次の日から、天気が変わり雨と風が強く、一気に寒くなりました」とあった。居心地のいいベリちゃんのキッチン。レンジの上に置いているレトロなラジオからいつも流れていたFM BREEZE NELSONを、私は大阪で、インターネットラジオから聴いている。目を閉じればそこはネルソン。NZ mommyも今頃、夕食を作りながらきっと聴いているだろう。たしかに、季節は巡る。

※この旅行記は2016年4月に書かれたものです。最新の情報はご自身でご確認ください。

ニュージーランド 旅行記(体験記)


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